概要

Roboware、WareXの全貌と新たなるチャンスは #03 【vol.13 中村遼太郎氏、ケイレブ クレイン氏】

ロジ人では物流テック(LogiTech)と分類される業界の著名人、サービスをインタビューしていきます。今回は、「物流の世界を新たなチャンスを生み出す場所」に変えていく、Gaussy株式会社のCEO 中村遼太郎さんと、CTOのケイレブ クレインさんにお時間を頂きました。#03ではロボットと人間の理想的な関わり方や今後の物流業界の変化についてお聞きしていきたいと思います。

プロフィール画像(中村遼太郎氏)
Gaussy株式会社 CEO 中村 遼太郎 氏
2009年、三菱商事入社後、中国物流企業への投資業務を行う。その後、三菱商事ロジスティクスに出向し、中東中央アジアの物流事業の運営、新規営業に従事。2015年以降、三菱商事にて新規事業開発担当としてシリコンバレーへの派遣後、海外スタートアップ投資及び倉庫ロボットRoboware事業、倉庫シェアリングWareX事業を立上げ。
プロフィール画像(ケイレブクレイン氏)
▼ Gaussy株式会社 CTO ケイレブ クレイン 氏
1999年にFidelity Investments入社。 2004年から日本に在住。大規模な多国籍金融サービス企業、小規模な新興企業、および電気通信会社で勤務。 自身のテクノロジー会社を経営することに加えて、テクノロジー部門とマーケティング部門の両方でさまざまな役割を経験。 2018年に三菱商事に入社し、WareXの初期バージョンを構築。開発拡大のためテクノロジーチームの組織化を担当。

Roboware、WareXの紹介

- 事業内容について詳しくお伺いしたいと思います。特に、「Roboware(ロボウェア)」「WareX(ウェアエックス)」について、学生の方たちでも理解しやすいように説明いただけますか。

中村さん:Robowareは自分たちのサービスですが、説明が難しいですね(笑)。今は倉庫ロボットのサブスク型サービスと言っています。何が難しいかというと、例えば象を説明する場合、「鼻が長い」「耳が大きい」「巨体」「グレー」といった具体的な特徴を述べます。同様に、Robowareは様々な機能を持っています。サブスクサービスである一方、ロボットソリューション、制御・管理ソフトウェアサービスでもあり、さらには保守・メンテナンスサービスも提供しています。

米国ではこれをRaaS(Robot-as-a-Service)と呼びますが、日本ではまだこの概念がありません。もし似ているものを挙げるとすれば、それはスマホみたいなものかもしれません。スティーブ・ジョブズが2007年にiPhoneを発表したとき、それは電話であり、インターネットブラウザであり、音楽プレーヤーでした。しかし今、その3つの機能だけでiPhoneを説明することはできませんよね。我々も同じように、まだ全貌を一言で説明するのは難しい新しいものを作っています。現時点では「ロボットのサブスクリプション」サービスと説明していますが、これは最終的な形ではありません。今後、さらに成長し、進化していくことで、iPhoneのように、ユーザー皆さんがイメージできるRobowareになれたらと思います。

ー それは興味深いですね。中村様が目指している将来像について、もう少し詳しく教えていただけますか。

 中村さん:ロボットはとても面白いテクノロジーです。まず、ハードウェアがあり、そのハードを制御するソフトウェアがあります。ハードはプラモデルやミニ四駆のようにシンプルで、その性能は制御するソフトウェアによって価値が大きく変わり、何よりも面白いところです。

今まで、大企業が大きな投資をして、高度なカスタマイズを行って、自動倉庫を作ってきましたが、我々が対応している倉庫業界のうち、8割から9割は中小規模の倉庫や事業者様で構成されています。大手企業と異なり、積極的に自動化を行っている事例は数多くありません。

しかし、企業が生き残っていくためには個々の特性を活かす必要があります。そのため、我々はロボットのサブスクサービスを提供することで、自動化を中小規模・地域の事業者様にも広げていき、自動化を民主化することを目指しています。Robowareのサービスを、カスタマイズせずにできるだけ標準化し、スマホを使うくらいの感覚で倉庫ロボットを使ってもらう世界が目標です。

ー その実現は非常に難しそうに見えます。

中村さん:実際のところ、それは思うほど難しくありません。Robowareのユーザー様には、中小規模の事業者様もおられます。最初から全てを自動化するのではなく、工程を限定して、例えば仕分けから自動化を始めることで、導入は比較的容易になります。全体を包括すると複雑に思えますが、部分的に見れば、人間が手掛けるよりもロボットが有利な部分もあります。そのような部分に焦点を当てて、仕分けなどの下流工程から始めて、上流工程へと自動化を広げていくことが重要です。

その過程でWareXの役割も大きくなります。これは倉庫版のAirbnbと考えていただければわかりやすいです。ウェブ上で使いたい倉庫を探し、空きスペースとマッチングし、倉庫提供者とコミュニケーションを取り、実際にモノを保管する。WareXを利用する主なターゲットは、柔軟に倉庫を利用したい人たちです。そのような人たちのために、私たちは可能な限り標準的なフォーマット化を行い、複雑性を最小限に抑えています。そうすることで、倉庫の利用者だけでなく、倉庫提供者にとっても利便性を高めています。

ロボットと人間の理想的な関わり方

- ロボットを提供している御社が考える、「ロボットと人間の理想的な関わり方」を教えていただけますか。

中村さん:我々が目指しているのは、完全な自動化ではありません。中央集権的な倉庫であれば完全自動化で価値が最大化される可能性があると思います。完全自動化された倉庫は、先ほど申し上げたクラウド倉庫に近い形かもしれません。

しかしGaussyの考える倉庫は分散型で、各事業者様の特性が最大限活き、それぞれの会社が提供したい倉庫の価値を最大化できればと思っています。Robowareのサービスで、倉庫ロボットは人手不足や生産性向上への対応に加え、年単位など期間に合わせた利用ができるようになり、中小のお客様にもご利用頂くことを想定しています。我々は倉庫が持つ能力を最大限に活かせるようにご支援し、全体として皆様の業務を後押しすることを目指しています。その世界では、流動性の高いロボットと人で、変化に対応できる倉庫になっているはずで、人の役割は消えることはありません。

また、ロボットは必ず故障します。メンテナンスや復旧作業は現場のスタッフの方が行う必要があり、これらの作業を通じて、現場のスタッフがロボットに慣れることが重要です。我々はユーザビリティ、つまり現場のスタッフがロボットを使いこなせるような環境作りを重視しています。

話を戻すと、完全自動化とロボットと人間の協働、どちらが良いかを判断するうえで重要な視点は、倉庫運用が持続可能であるかです。その観点からすると、何かしらの形で人間が関与することがあるため、人間とロボットがうまく共存することが理想的な関わり方だと思います。

また、我々はカスタマーサクセスを重要視しています。現場にタブレットを配置し、Q&Aやマニュアルが確認できるようにしており、何か問題が起きた時にチケットを作れ、トラブルが発生した時にWeb会議を行えるようにしています。そして、現場のスタッフでもトラブルを解決できるように環境を整えています。故に、我々が重視しているのは、ロボットがどのように使われ、どのように現場に馴染んでいくかという点です。

インタビューの様子

物流業界の将来とビジネスチャンス

ー 今後の物流業界はどのように変化していくと予想されますか。また、業界の可能性やビジネスチャンスはどんなところにあるとお考えですか。

中村さん:インタビュアーの皆さんはどう変化すると思いますか。

ー 個人的にはより複雑になると思っています。商流が複雑化して、その結果物流が厳しくなる。トラックだけでなく、物流倉庫も影響を受けると思います。現状を顧みると、その部分は現場が頑張っている状況です。

ー 賃金だけで解決することは難しく、限界が見えてきています。今のところなんとかやりくりしている状態ですが、今後は難しくなると考えています。特に人手が少なくなる傾向を考慮に入れると、サプライチェーン全体、そして物流全体でプロセスの見直しが起きると思っています。既存の企業も苦境に立たされることがあると感じています。

中村さん:私も同じように思っています。最近、物流業界の就職活動が話題です。現時点で、魅力的だというメッセージを無理に学生に伝える必要はないと思っています。今の物流業界は変革期に入るところで、今後数年は変革真っただ中になっていきます。物流業界に入ったとしても、基本的にはマニュアルに従った業務もあれば、変革期のカオスな状態も続き、無理した魅力だけ伝えると学生たちはがっかりするかもしれません。

物流業界の魅力は何か、それを伝えていくことが重要だと思っています。今は「物流業界を変えていきたい」そういったチャレンジができる場があります。2024年問題など課題は山積みです。そして、物流業界はリアルな問題を解決する場であるということこそが面白いと思います。

インタビューの様子

中村さん:最近、私はメタバースに興味があります。メタバースの世界でも物流が必要になると考えています。例えば、バーチャルな世界で生まれた価値をリアルな世界で交換する必要があるからですね。そのためには、物流が必要になります。これは新しい形の物流、すなわちフレキシブルで変化に対応できる物流が求められると考えています。これには既存の物流だけでなく、新しい形の物流も必要になるでしょう。そのためには、新しいことを考えることができる人が業界に入ってくることが必要だと思います。それが物流業界の新たなチャレンジであり、新たなビジネスチャンスだと考えています。

ー メタバースの世界とフィジカルの物流をどうつなげるか、非常に面白いと感じました。本日はありがとうございました。

<取材・編集:ロジ人編集部>

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