概要
自動車整備の視座からとらえるモビリティの未来とは #01 【株式会社ナルネットコミュニケーションズ代表取締役社長 鈴木隆志】
ロジ人では、物流テック業界の著名人やサービスについての取材記事を続々と発信。今回は物流を支えるリース車両のメンテナンス管理を手がける株式会社ナルネットコミュニケーションズ代表取締役社長、鈴木隆志さんにインタビューしました。#01では、同社の事業内容や特徴についてお聞きします。
▼ 株式会社ナルネットコミュニケーションズ 代表取締役社長 鈴木隆志氏
大学卒業後、日本オートリース株式会社(現株式会社ナルネットコミュニケーションズ)に新卒で入社。課長、部長、執行役員、常務取締役を経て、2014年に同社の代表取締役社長に就任。事業の大黒柱を、自動車リースから自動車のメンテナンス管理業務に転換。リース車両の受託管理を手がける自動車整備工場のネットワーク拡大に尽力し、2021年6月に全国の約1割を占める1万工場との提携を実現。
リース業から、メンテナンスの管理会社へ
- 御社の沿革と、現在の事業内容を教えてください。
当社は現在、全国の整備工場ネットワークを活かした自動車のメンテナンス全般に携わる事業を主軸としています。45年前に自動車リース会社として創業したのですが、元々は自動車修理工場に勤めていた創業者が、自動車整備のノウハウを活かしてリース業を始めたのが始まりでした。
リース業のメリットは、新車を提供しつつ、メンテナンス、保険、売却時のサポートなど複数のサービスも併せて提供しやすいことです。お客様が車を処分する際にも、適切に管理された中古車であれば残存価値が高まり、売却益が生まれます。また、ひとたび契約となれば、お客様と長いお付き合いができるという点も大きなメリットです。
一方で、契約台数に比例してコストがかさむ点はデメリットです。例えば、お客様に200万円の車を提供する場合、リース料を月々5〜6万円ずつ払っていただくわけですから、車を調達するために必要な残りの金額は、一時的に私たちの費用負担となります。そのため、一時期は契約を増やせば増やすほど、借り入れが増えてしまうという状況でした。
なんとかできないかと考えた私たちは、大手総合リース会社に対するコンサルティングサービスの提供を始めました。具体的には、車の仕入れ方、リース料の計算方法、保険への加入、メンテナンスのやり方、残存価額の設定方法などについての助言やサポートですね。
次第に、お客様の業務の一部を代行するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の分野に入り始めました。お客様に資金を負担していただく代わりに、当社は営業を含むさまざまな業務代行をするという形で価値を提供してまいりました。
このように徐々に事業を変化させていく中で尖ってきた強みが、多くの整備工場と提携したことで得られた「メンテナンスのノウハウ」でした。それがメンテナンス管理会社へと移行してきた背景です。事業分野の広がりに伴い、旧社名の頭文字の「NAL」、工場のネットワークとお客様とのコミュニケーションが重要であることも踏まえて、現社名である「ナルネットコミュニケーションズ」に社名変更しました。
変幻自在のネットワークが支える現場
- きめ細かくネットワークを活用しつつ、整備の品質を担保することは大変ではないでしょうか。
元々何のバックボーンもない独立系の会社でしたので、全国に整備を行うための工場のネットワークが必要でした。そこで、まずは整備の品質を担保するために大手のディーラーとの協業を開始しました。当時トヨタのカローラや日産のサニーは、営業車やライトバンの分野で約9割を占めるほど主流の車種であり、それぞれディーラーが全国に150社ほどありましたので、整備ネットワークとしては十分でした。
各ディーラーの営業所に整備委託を呼びかけ、車検や法定点検などの重整備を中心にお願いできる体制を整えました。ディーラーのしっかりした基準での整備が可能となり、加えてリコールやクレームについてもきめ細やかに対応いただけます。
ただ、ディーラーとの整備のネットワークを構築するだけでは、パンクやバッテリー上がりなどの軽整備への対応が不十分でした。そこで、次にガソリンスタンドと協業することで、軽整備のネットワークを構築し、ワンストップで様々な整備を提供できる体制を整えました。
1つの契約に対して複数の整備工場を案内できるというのは、当時は珍しかったようです。現在は全体の6割ほどをディーラーに整備委託していますが、整備工場のネットワークを常に見直しつつ、必要な整備に応じて多様な選択肢を提供するように努めております。
物流業界のニーズにも対応
- ありがとうございます。商用車のメンテナンスについてもお話いただけましたが、例えば物流を支えるトラックなどの車両をきめ細やかに整備できるネットワークもお持ちなのでしょうか。
はい。同じトラックでも、冷凍機やパワーゲートなどの架装を含めたメンテナンスと、シャーシ部分のみのメンテナンスでは、整備工場を変えた方が適切ということもあり、それを可能とする整備ネットワークを構築しております。
一つのシステムですべての整備工場のメンテナンス状況を管理しているため、管理コストの面で大手リース会社に引けをとりません。また、複雑な点検や整備も複数の工場に手配できるため、細かなニーズをとらえながら業界内で生き残ってきた自負があります。
- ワンストップでさまざまな点検ができるということですね。
そうですね。料金だけでなく、整備地域の指定や難しいメンテナンスなどきめ細かなご要望にもお応えできるよう、体制を整えてまいります。
ー 自動車整備の細かなニーズを、ネットワークとコミュニケーションを駆使しつつ解決している同社。時代とともにトレンドを見据え、主軸となるサービスも変えてきました。次回は、鈴木さんが新たなモビリティの潮流に見出しているチャンスについてお話しいただきます。