概要
物流のパワーバランスを変えるには #02 【株式会社comvey代表取締役 梶田伸吾】
ロジ人では物流テックと分類される業界の著名人、サービスをインタビューしていきます。今回は株式会社comvey代表取締役、梶田伸吾さんにインタビューをしていきます。#02では、売り手と運び手、買い手のパワーバランスを変えようとしている取り組みについて、お聞きしていきたいと思います。
▼ 株式会社comvey代表取締役 梶田伸吾氏
大学卒業後、2016年、伊藤忠商事株式会社に入社。物流ビジネス部に配属後、ロジスティクス関連の子会社に出向。約6年間、物流分野の営業やオペレーション、新規事業企画などの経験を積んだ後、2022年6月に「美しい物流をつくる」をミッションとした株式会社comveyを設立。
「3K」のイメージを「美しく」
- 物流業界に対して抱いている課題意識を教えてください。
物流分野は、「3K(きつい・汚い・危険)」というマイナスイメージが付きまといますよね。宅配業者の方や物流関連企業は素晴らしい仕事をしているのに、もったいないと思います。加えて、お客様を大切にする考え方が強い物流業界では、買い手のパワーが強いです。
この偏ったパワーバランスのままでは、ECの規模が今以上に拡大したとき、業界全体に限界が来ると思っていて。お客様のために過剰に行われている梱包などのサービス、いびつな力関係を是正するべきだと考えています。
- そうした課題に対する御社のビジョンは、どのようなものでしょうか。
リユーザブルバッグも取り組みの一環ではありますが、物流は単に「物を運んで終わり」のサービスだと思われてしまっている部分を変えていきたいです。物を運ぶだけの機能ではなく、人と人をつなげたり、嬉しい気持ちを与えたり。そういった「想い」を運ぶ事ができるのが物流だと思っています。売り手と買い手と運び手の考えは今、通じ合っていないところがあるはず。我々がハブになって、3者の想いが通じ合う社会を作っていきたいです。
実は「comvey」という会社名には、2つの意味があります。本来「物を運ぶ」「気持ちを伝える」意味の単語「convey」は、よく見ると綴りが「m」ではなく「n」なんです。この単語に、あえて「共に」を意味する「com」という言葉を重ねています。ロゴマークに日本の初期の物流文化である飛脚をモチーフした四角形を配置しているのも、こだわりポイントです。
私は、人と人との想いが通じ合っている状態を美しいと思っています。我々が目指す「美しい物流」は、見た目の美しさというよりは人と人がつながり、売り手、買い手、運び手の想いが通じ合っている状態を意味しています。
エシカル消費を物流にも
- 御社のリユーザブルバッグを中心とした事業が評価されている部分を教えてください。
ご評価いただいているポイントは、消費者、つまり荷物を受け取るお客様も一緒にサステナブルな未来をつくっていけるサービスであるところでしょう。EC事業者が一方的に押し付けるのではなく、お客様が自分の意志で選ぶ仕組みです。
基本的には、買い手であるお客様を巻き込みながら、サステナブルなECを実現していこうというスタンスですね。例えば売り手は、ダンボール以外に我々のバッグを扱うことで新たな選択肢を消費者に提示できる。一方、買い手はその売り手が、人や地球のことを考えているというメッセージを受け取れるんですね。従来では発生しなかった「想い」の交換が生まれます。
言い換えれば、バッグを通じて人と人がつながり、売り手と買い手の間に今までなかったコミュニケーションが発生しているはずです。この事業が、我々のビジョンにつながっているということでもあります。
宅配便に代わる物流の仕組みをつくる
- 課題や今後の目標として感じていることはありますか。
今までは、梱包材といえばダンボールか使い捨ての袋しかなかったと思います。そこに新しい選択肢としてリユーザブルの文化を根づかせていくのが、我々の使命です。加えて、ゆくゆくは梱包の問題だけではなく、EC事業者が抱えている返品コストの負担を軽減したり、配達員不足を解決できるような取り組みができればと思っています。
宅配便という既存のビジネスモデル自体が、これからのEC社会にそのまま対応するのは難しくなると思っているので。我々はEC社会にフィットした、宅配便に代わる新しい物流の仕組みをつくっていきたいと考えています。
- 梶田さんが構築しようとしている「美しい物流」は、物を運ぶという機能にとどまらず人と人の気持ちが通じ合うもの。買い手が主体的に選べる仕組みづくりが、双方のコミュニケーションを生んでいます。次回は、梶田さんのキャリア論、仕事への向き合い方などのお話を伺いたいと思います。