概要
「美しい物流」を実現するための挑戦 #01 【株式会社comvey代表取締役 梶田伸吾】
ロジ人では物流テックと分類される業界の著名人、サービスをインタビューしていきます。今回は株式会社comvey代表取締役、梶田伸吾さんにインタビューをしていきます。#01では、「美しい物流」をつくろうと奮闘する現在のキャリアを構築する原点について、お聞きしていきたいと思います。
▼ 株式会社comvey代表取締役 梶田伸吾氏
大学卒業後、2016年、伊藤忠商事株式会社に入社。物流ビジネス部に配属後、ロジスティクス関連の子会社に出向。約6年間、物流分野の営業やオペレーション、新規事業企画などの経験を積んだ後、2022年6月に「美しい物流をつくる」をミッションとした株式会社comveyを設立。
繰り返し使える梱包バッグを普及
- 現在の仕事内容を教えてください。
EC事業者様向けに繰り返し使えるエコな梱包「シェアバッグ®︎」と、それを運用するためのオペレーションシステムを開発・提供しています。私たちはオンラインで買い物をしたとき、家に届いた段ボールを開けてゴミを出していますよね。
ECが当たり前になった現在、物流や梱包の分野で脱炭素化に向けた取り組みは、まだあまり進んでいません。加えて、段ボールの処理やゴミが出ることにストレスを感じるお客様も増えています。梱包の部分でCO2を削減しつつ、お客様のストレスも減らす。そのための手段として、我々のサービスを提供しています。
我々のサービスが組み込まれたオンラインストアでは、消費者が段ボール以外にも商品の梱包方法として「シェアバッグ」を選ぶことができます。250円を負担していただきますが、届いたバッグについている二次元コードを読み取ると、次回から使える500円オフのクーポンが入手可能です(2023年10月時点)。
こちらのクーポンは、comveyのサービスを導入しているブランドのもの。クーポンを獲得した後は、バッグを折り畳んでポストに投函するだけ。お得に梱包材をリユースできるサービスとなっています。
- 私も実物を触ってみたのですが、デザインや材質含めて素敵ですね。
大きさはS、M、Lの3種類です。マットな質感で、男女問わずに使っていただけそうなグレーの素材を選びました。日本郵便様とは20回以上打ち合わせして、規格に準じたサイズ、重さ、他の郵便物が引っかからない形を追求しています。
バッグには可変性があり、宅配便の60サイズ/80サイズ/100サイズ、ネコポスやクリックポストにも対応しているのも特徴。加えて、裏面に返送のための表記が縫い付けられており、ポストに入れるだけで、切手や追加料金なしで返送できます。
素材は、郵送で繰り返し使える耐久性や軽さ、防水性のある国産ポリエチレンにこだわりました。ポリエチレンは今ほとんどがベトナムや中国で作られている中で、あえて国産を選んでいます。
理由としては、製造工程で排出されるCO2量を正確に把握し、国内で責任を持ってリサイクルするためです。岡山県の萩原工業株式会社のものを採用しています。リサイクルも同社がノウハウを持っており、古くなったバッグをペレット化し、次回生地を生産する際に混ぜ込んで使う水平リサイクルの仕組みを構築しています。
- どのような着眼点で、こちらのリユーザブル梱包の事業が生まれたのでしょうか。
BtoB物流の業界では「リターナブルボックス」や「通い箱」がありますよね。企業間のやり取りでは梱包材を繰り返し使うことが多いのに、「消費者向けのサービスでは梱包材の使い捨てが多いのは何でなんだろう」という疑問から着想しました。
さらに遡ると、2016年に伊藤忠商事に入社して、物流ビジネス部に配属されたのがきっかけかもしれません。ちょうど2016年は物流のスタートアップができたり、ニュースで宅配便の限界などに触れられたりすることが増えていました。私自身、物流の課題や海外のトレンドを調べるのにのめり込んでしまって。面白いなと思って調べていたら、次第にBtoCで梱包材をリユースすることに取り組みたいと思うようになりました。
- 学生時代はどのような分野に興味をもっていましたか。
ボランティア活動をする学生団体やゼミ活動に注力していました。大学1年のときから、ネパールの子供たちに本を送る活動などに取り組んでいましたね。3、4年のときはゼミでの研究に注力しました。いつも自分で旗を上げるのが好きで、リーダーのポジションを数多く担当させてもらいました。そのときに思ったのは「メンバーを巻き込みながら目標に取り組んで達成することが楽しくて、好きで、やりがいを感じる」ということ。
社会人になってからも、そういうことをやっていきたいのだろうとはイメージしていましたね。もちろん社会問題に関心があって、貧困とか環境問題などの課題解決に貢献したい想いもありました。
実現するためにはさまざまな手段があると思います。ボランティア、NPO、もしくはビジネス。当時の私なりに考えた結果、ビジネスが一番サステナブルだと感じました。ビジネスを実践するために、商売の基本を勉強できる商社に入社したという経緯があります。
総合商社で気づいた物流の魅力
- 物流業界に身を置くきっかけになった、商社でのキャリアについて教えてください。
最初に物流ビジネス部に配属になりました。そもそも物流のことはあまり知らなかったのですが、とても仕事ができてバリバリ活躍している先輩がいました。「この人のいる部署なら成長できるに違いない」と思って、物流ビジネス部を希望しました。入ってみたら、そのときからちょうど物流業界も注目され始めて。やってみればやってみるほど面白い領域ということに気づきました。
商社での若手のキャリアとしては、3~4年目くらいで 早めに海外への配属を希望する人が多いです。正直、自分も海外へ行きたい気持ちはありました。でももっと現場を見てみたいと思い、5~6年目のときは、手を挙げて子会社の伊藤忠ロジスティクスに出向させてもらった経緯があります。
- 振り返ってみて、特に学べたことは何でしたか。
物流はモノだけではなくて「想い」を運ぶことのできる付加価値のあるサービスだということです。6年間の最後の2年は、本当に現場に近い仕事に触れさせてもらいました。港に担当者と一緒に行って荷役をやったり、梱包作業を一緒にやったり。海外の物流の拠点で仕事をすることもありましたし、営業をする機会もいただきました。フォワーディング業務などのオペレーションにも携わったこともあります。その中で、勉強になったと感じたことは少なくありません。
大企業もベンチャーも本質は同じ
- 新卒で社会人になってからと現在のベンチャー経営、働き方やマインドに違いはありますか。
商売は、人が人に対してするもの。その点で総合商社もベンチャーも本質的には変わりません。最後は人間力がものをいう世界です。人に何かをお願いしたり、時には謝ったりすることでビジネスは成り立ち、動いていきます。
個人的にですが、人と人との想いが通じ合っている状態はすごく美しいと思うんですよね。例えば、街中で若い人がお年寄りに親切にしている様子や、お店でお客さんが店員さんにありがとうって言っているときとか。そういった人と人の想いが通じ合う瞬間を、もっともっとこの世の中に増やしていきたい。物流には、それができるのではないかと思って今、この事業に取り組んでいます。
- 商社時代の経験をキャリアに活かしつつ、ベンチャー経営に乗り出した梶田さん。さまざまな課題意識や経験が現在のキャリアに活きているのではないでしょうか。次回は、物流業界が解決すべき課題についてのお話を中心に伺いたいと思います。