概要
2024年問題に対する解決策 #02【トラボックス株式会社 皆川拓也】
ロジ人では物流テックと分類される業界の著名人、サービスにフォーカスしていきます。今回はトラボックス株式会社で代表取締役社長を務める皆川拓也さんにインタビューしました。#02では、2024年問題に対する解決策についてお話いただいています。
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▼ トラボックス株式会社 代表取締役社長 皆川 拓也氏
2005年日本大学法学部卒業後、KDDI株式会社入社。2014年よりスタートアップ支援プログラム「KDDI∞Labo」の運営統括。その後2018年よりCBcloud株式会社に取締役CSOとして参画し、軽貨物業界と様々な業種とのアライアンスを実現。KDDIを経て、2022年にトラボックス株式会社に入社後、事業部長を歴任し2023年5月より現職。
物流業界に興味を持つようになったきっかけ
ー ここからは皆川さんの大学時代について振り返っていこうと思います。ご自身は日本大学法学部を卒業されていますが、入学にはどういった経緯があったのですか。
高校時代にアルバイトしていたコンビニの店長に影響を受けたのがきっかけです。その方は前職で大手化粧品メーカーに勤務していたのですが、コンビニ運営会社の社員なら年商数億円の店舗を複数動かす経験ができるという理由で転職を決意したそうです。話を聞くうちに経営の奥深さや面白さを知り、「もっと経営について知りたい」と大学入学を志しました。
ー コンビニを経営している姿を見るうちに、経営に興味が沸いていったということですね。そこから大学を経て新卒でKDDI株式会社に入社されますが、こちらにはどういった考えがあったのでしょうか。
当時の私には、通信インフラに携わりたいという気持ちが強くありました。私が新卒で入社した時期は、ガラパゴス携帯(ガラケー)の全盛期で通信キャリアが携帯端末の企画からサービスまで提供しており、少しずつ世の中にインターネットが普及していく様子を見て「通信キャリアが今後世の中を大きく変えていくのではないか」と考えるようになっていきました。大学入学のきっかけとなったコンビニの会社からも内定をいただきましたが、最終的にKDDI株式会社への入社を決めました。
ー KDDI株式会社に新卒で入社してからは、どういったお仕事をされていたのですか。
新卒で入社した直後は、サービスを販売する現場を知ることを目的に営業部門に配属して頂きました。その後は3年ごとに異なる業務を担当し、家電量販店との販売手数料の調整や、インターネットサービスプロバイダとの交渉などの業務経験を積んでいきました。
ー さまざまなお仕事を経験された皆川さんですが、物流業界に興味を持つようになったきっかけは何だったのでしょうか。
新規事業部門に異動し、「KDDI∞Labo」というプログラムを担当したことがきっかけです。本プログラムは、スタートアップ企業を立ち上げる起業家を支援・育成することを目的としており、そこで軽貨物領域のマッチングサービスを提供するCBcloud株式会社に出会いました。軽貨物業界の課題に触れることで、私の物流業界への関心も次第に深まっていきました。
通信から物流へ
ー 2018年にCBcloud株式会社へ転職されたことで、物流業界に本格的に携わるようになられたと思います。通信から物流へと別の業界に足を踏み入れたのは、どういった思いがあったのでしょうか。
私は、働く上での行動原則として「日本が将来的に豊かであってほしい」と考えています。今の日本をみると、失われた30年と言われるような元気がない状態が続いています。そうした状況下で、日本という国がずっと豊かで便利な国であるためには何が重要か思いを巡らせていた時、ECサイトの興隆によって国内外からたくさんのものが運ばれる様子を目にしました。
宅配サービスやECサイトは、人々の生活をより豊かで便利なものにする、生活の中でなくてはならない存在です。このような事業を支えている物流インフラに携わることを通して、日本に活力をもたらしたいという想いから、転職を決断しました。
ー 物流業界では、2024年問題(2024年の法改正に伴って輸送能力が不足するとされている問題)が大々的に取り上げられています。皆川さんはこれを解決するためには、どのような手段があるとお考えですか。
2024年問題にかかわらず、物流の問題は日本全体の問題だと捉えています。輸配送サービスは法人だけでなく今や老若男女問わず利用されているため、トラックドライバーや物流に携わる人はもちろん、国として行動変容や意識改革が必要です。
輸配送サービスを利用する側として料金はなるべく下げたいと考えがちな側面があります。しかし、利用者の方に適正なサービス利用料金についてご理解いただくのも、物流業界全体として必要なプロセスだと感じています。
ー トラックドライバーが人材不足であるならば、給与などの待遇を改善し、運び手を確保することも考える必要があるということですね。人的コストの上昇によって、配達コストも増加する可能性がありますが、それを利用者にも理解してもらう努力が大切だと。
はい。今や物流が関わっていないものを探す方が難しいほどです。物流業界として現状の問題と解決策を世間に広め、理解を得られるようにしていかなければなりません。ただし、一つの会社ができる取り組みには限界があります。物流業界に携わる人の間でもっとコミュニケーションをとって、問題解決に向かっていく必要があると考えています。
ー 物流の仕組み自体を変えていくには、業界全体で共通の課題意識を持ち、協力をしなければならないということでしょうか。
はい。コミュニケーションが不足していたり、課題意識にばらつきが生じてしまっていたりしては、いつまで経っても変化は起きません。こうした背景からも、交流会を積極的に開催しています。
2024年問題を解決するには
ー 皆川さんはこれまで通信や物流などのキャリアをお持ちですが、そこで得た経験や教訓をどのように現在の仕事に活かしていますか。
1番の教訓は「自分でできることは限られている」ということです。現在トラボックスで定期開催している交流会も、さまざまな人たちとのコミュニティを形成し、連携を深められるようにしたい、といった狙いがあります。
KDDI時代には、事業やプロジェクトを開始する際にはパートナーを大切にするようによく言われていました。自分たちにできないことは専門家や外部の方にお任せした方がいい。その上で自分たちと提携するからこそできることを世の中のために発信していく、という考え方は今でも変わっていません。
ー 「自分でできることは限られている」という考えは、KDDIでの経験から学ばれたものだったのですね。
はい。ただ、業界全体を変えたいと考えた際には、所属している会社の「知名度」「信用度」「動く力」「資金力」がどうしても関係してきます。より多くの業界に携わる方々や世の中に届けるために、会社としてのネームバリューや看板も必要になるのです。
ー そして皆川さんがトラボックス株式会社に転職してから今まで、どのような思いを持たれてきたのでしょうか。
転職したのは、2024年問題を解決したいとの想いが強かったことが一番の理由でした。入社してからもそうした想いは変わらず持ち続けています。現状の物流の仕組みでは、物流に携わる方々の多くが我慢を強いられ、規模が縮小の一途を辿るのではないかと考えています。現状の仕組みのままサービスを継続するのか、それとも物流全体のあり方を変えるか、その分岐点に私たちは立っているのです。
我慢をし続けたまま働くことは、業界の人たちにとって辛いことですし、そんな職場に身を置きたいと思う人も少ないでしょう。結果として新しい人材が入ってこなければ、人手不足を加速させることになります。私の使命は、この先もずっと便利な世の中を保ち続ける仕組みを作ることだと考えています。この会社で物流の仕組みを効率化させ、業界全体を変革できるよう尽力していきたいですね。