概要
物流スタートアップ企業の魅力とは?転職を選んだワケ #01 【vol.10 藤巻 陽二朗氏】
ロジ人では物流テックと分類される業界の著名人、サービスをインタビューしていきます。今回は、株式会社Mujinで物流営業部 統括を務める藤巻陽二朗さんにインタビューをしていきます。#01では物流スタートアップに転職した理由とその魅力、スタートアップならではの困難についてお聞きしていきたいと思います。
▼ 株式会社Mujin 営業本部 物流営業部 統括 藤巻 陽二朗氏
大学卒業後、大手資材会社へ就職。2018年に株式会社Mujinに転職。営業本部物流営業部担当課長を経て、現職に就く。
物流ロボットの営業職とは
ー 現在の仕事内容について教えてください。
Mujinは、独自開発したロボット知能化技術により産業用ロボットの知能化を実現し、物流・製造現場へ自動化ソリューションを提供しています。知能ロボットコントローラ「Mujinコントローラ」を主軸に、環境に応じて臨機応変に対応できる知能ロボットを構築し、これまで難しいとされていた複雑な工程の自動化を推進しています。その中で私は、物流営業部の統括をしています。
我々の自動化ソリューションを導入させていただいているのは物流・製造業です。物流業におけるメインのお客様は物流センターです。自動化できる設計の物流センターを構築しているマテハン企業様やエンジニアリング企業様を中心に折衝し、小売、EC(ネットショップを運営する事業)、卸、3PL(倉庫会社)などをお客様としています。
今、高速道路沿いにどんどん新しい物流センターが建設されているのを見たことありますか。大きなセンターだと、500〜1,000人もの方々が働いています。
東京圏では物流センターの空室率が今までは3%以下だったところ、4%ほどになったそうです。Eコマースの市場拡大などにより、新規の需要は増えているのに、なぜでしょうか。実は先の需要を見越して物流センターが建設され、結果として空室率が上がっているそうです。今たくさんの物流センターが作られています。その物流センターの自動化を担っているのが、我々の知能ロボットです。
知能ロボットをご利用いただくためのご説明、ご提案、見積作成、本当にお客様のためになるのか、コストダウンになるのかといった打ち合わせをしたりするのが主な業務です。
他にも業務標準化の仕組み作りだったり、マーケティング部と一緒に展示会の企画をしたり、想像しやすい営業の仕事以外にもやることはたくさんあります。
ー 展示会の企画もされていらっしゃるんですね。営業部として具体的にどのように携わるのですか?
展示会にご来場されるお客様に対し、どういった内容のものをどのようにご紹介すればお客様に魅力を感じていただけるかを考えています。そのために、お客様が持たれている課題に対し、Mujinがどう貢献できるかを考えるために、実際にお客様にヒアリングし、そのヒアリング結果を参考にしながら、展示会テーマを練っていきます。
例えば能力面で「1時間に300個の荷物をさばけるだけでは能力が不足している」といわれるならば、500個さばければいいのか。はたまた金額面で「高いからいらない」といわれるならば、半額だったら購入していただけるのかなどを考えながら、ターゲットを探っていきます。ヒアリングの際は、マーケットの中で各社様が抱える大きな課題が何かを意識することも大切です。それをもとに、展示会内容を議論・企画します。大きな会社が2社、3社と同じ需要を示すようであれば狙い目です。彼らが喜ぶものを展示会に出展します。
出展が決まったら、お客様を展示会へご招待し、展示会後のアフターフォローまでしっかり担います。展示会の前段階から準備を練るのも私の仕事です。スタートアップ企業は裁量が大きいのも魅力のひとつですね。
大手企業からスタートアップに転職したワケ
ー 藤巻さんは以前大手資材会社にお勤めされていたと聞いています。Mujinに転職された理由を教えてください。
以前の会社もすごくいい会社だったため、もともと転職する気はまったくありませんでした。そんなときに「Mujinに来ませんか」とお誘いを受けたんです。
前職もいろんなことに挑戦させてもらい、楽しかったのですけれども「5年後、何をしているのかな」と考えたときになんとなく想像ができました。
それに対してMujinはスタートアップという点で、先が見えにくい部分にすごくワクワクしたので「Mujinだったらもっと挑戦できるのではないか」と、そういったイメージが沸きました。それがMujinに転職した理由です。
ー スタートアップ企業での営業職の楽しさはどこにありますか。
スタートアップやベンチャー企業はひとつの特化した武器を持っていることが多いと思います。Mujinの強みは、ロボットの知能化技術です。
ロボットダンスのようなカクカクした動きではなく、3Dビジョンカメラで見て立体的に対象物や周辺環境を認識し、そこにあるものをどうやったらぶつからないで最適な経路かつ、安全に早く持っていけるかをコントローラが論理的に計算し、ロボットを制御する技術を実用化したのはMujinが世界で初めてなんですよ。
しかし、当初は実績を気にされるお客様も多かったため、その武器で商品を販売するのは、難しい一面もありましたが、同時に、それを伸ばしていくことも面白みです。
様々な要素が整備された大企業と違い、スタートアップは尖った武器だけを持って戦いに行く。でもそれは誰にも負けない武器です。その唯一無二を販売するのが面白いと思っています。
ー 自信を持って広めたい商品だからこそ、営業職におもしろさを感じるのですね。
あとは常に新しいものを生み出すおもしろさもあります。技術がどんどん進歩していて、そのスピード感には社内にいる私でも驚きます。技術がお客様のご要望に対して、その時点で技術的に難しい場合もあります。しかし少し経つと技術が追いついているんです。
技術を進歩させるためには、営業からエンジニアに現場のニーズや、それを開発することでの効果などを伝えていくことが重要です。その活動が、開発を進めるきっかけになります。その結果、今までできなかったことが、できるようになるということが起こりえます。
以前お断りせざるを得なかったお客様にできるようになった旨をお伝えすると「すごいね、できるようになったんだ!」と喜んでいただけることもあります。
ー 「やる」と決めたあとのスピード感は、スタートアップ企業ならではでしょうか。
そうですね。会社の意思決定の早さには大手企業と違いを感じます。社長との距離も近いですし、社長が「やる」といえば会社はその方向にすぐ動きます。また、Mujinのメンバーは、主体性をもって動く人ばかりなので、何か新しいことを始める時や、問題を解決するときは、誰かを待つのではなく、自ら率先して行動します。
3年前、ロボットに加えて新しいソリューションとして、AGV(無人搬送車)を始めました。「やろう」と決めるまでも早かったですし、決めてから事業にして、部署を作って、売り方を決めるまでもかなりのスピード感でした。決断が早いのは、良いところだと思います。
「なかなか売れない」を乗り越える気づき
ー ではスタートアップ企業で営業統括を務める中で、難しさや大変さを感じるのはどんな場面でしょうか。
スタートアップ企業ならではの、革新的な技術や目新しい商品はお客様に「すごいね」といってもらえます。それと同時に「他の会社が使ってから導入しようかな」「まだ実績はないよね」と考える方も多いのです。
物理的にも物流センターの中に知能ロボットを置くスペースを確保し、生産性効率など、倉庫全体のことを考えなければならないので、すぐに買っていただけるものではありません。自動化ソリューションの販売は、そういった部分に難しさもあります。
そもそも私はMujinに転職して、初めて営業職に就きました。自分が想像する営業のやり方と周囲の見よう見まねでアプローチしましたが、なかなか売れない。初めのうちは非常に苦労しました。
しかし、Mujinの技術を認めてくださり、我々のソリューションを購入してくださるお客様がいらっしゃるので、販売する難しさがあると同時に面白さもあります。
ー 何か状況が変わったきっかけはありましたか。
立ち返ったときに気づきました。前職が技術的な立ち位置だったため、ロジックに詳しいゆえに、自分の営業の仕方が技術の押し売りのようになっていたのではないかと立ち返り、お客様目線で考えた時に気づいたのです。お客様に「こんなにすごい技術です!こんなこともできます!」とご説明しても、お客様の本当のご要望と私の売り方にギャップがあったと今は思います。
お客様はMujinの技術を購入されたいわけではありません。困っておられることがあって、それを解決したいのです。例えばコンベヤを買おうと考えたときに、すごい性能の良いコンベヤを「かっこいいから」購入されるわけではありませんよね。モノを運ぶのが大変で、その性能なら課題を解決できるから購入されるはずです。
お客様の課題を明らかにして「我々Mujinと一緒に取り組んでいただき、今までできなかったことも改善できるかもしれません」とご提案する必要があります。お客様目線に立って、変わっていきました。
ー 「お客様目線に立つ」とはよく聞きますが、藤巻さんのお話はとても腹落ちしました!心に留めておきたいです。