概要

予期せぬ選択で開けたキャリア #03 【株式会社ナルネットコミュニケーションズ代表取締役社長 鈴木隆志】

ロジ人では、物流テック業界の著名人やサービスについての取材記事を続々と発信。今回は物流を支えるリース車両の受託管理を手がける株式会社ナルネットコミュニケーションズ代表取締役社長、鈴木隆志さんにインタビューしました。#03では、鈴木さんが新卒で当時の自動車リース業界に飛び込んだきっかけについてお聞きします。

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▼ 株式会社ナルネットコミュニケーションズ 代表取締役社長 鈴木隆志氏
大学卒業後、日本オートリース株式会社(現株式会社ナルネットコミュニケーションズ)に新卒で入社。課長、部長、執行役員、常務取締役を経て、2014年に同社の代表取締役社長に就任。事業の大黒柱を、自動車リースから自動車のメンテナンス管理業務に転換。リース車両の受託管理を手がける自動車整備工場のネットワーク拡大に尽力し、2021年6月に全国の約1割を占める1万工場との提携を実現。

興味のなかった分野で開花

- 新卒で日本オートリース株式会社(現株式会社ナルネットコミュニケーションズ)に入社したきっかけを教えてください。

私が大学生の時はまだバブルの雰囲気があり、職探しも何とかなるかと思っていました。一度留年したのですが、遊んでばかりで真面目に就職活動をしておらず。当時交際していた彼女が見かねて私に当社を紹介してくれました。面接行ってみなよ、と。あまり深く考えずに選択したキャリアで、「目的があって、こんな仕事をしたい」という野望はこれっぽっちも持っていませんでしたね。

私は鉄道模型が好きで、はじめから自動車に興味があったわけではないんです。入社当初は社員が30人ほどの小さな会社だったので、当時から意見を言いやすい風土がありましたし、自動車リースやメンテナンス業界自体、まだ確立したばかりでした。仕事で関わる取引先の方々も30代ぐらいの方が多くて、全体的に年齢層が若かったです。また、部長会で議論したことを経営会議を経て取締役会で最終決定する、といった大企業のようなフローもなかったんです。新しいことにどんどん挑戦できる社風であるという点で、私は大変恵まれていたし、楽しかったです。

- 学生または新社会人の時を振り返って、ご自身でどのような方だったと思われますか。

失敗ばかりでしたね。ちゃんとしていないと怒られましたが、失敗を理由に叱咤されることはありませんでした。私が最初に取り組んだ仕事で印象深かったのは、新車点検をお任せしているディーラーに対して「先方とのやり取りを書面でなく電話で行ったらどうか」と提案した出来事ですね。社内で提案が通り、周囲からも「やってみたら」と任せていただき、行動に移すことが出来ました。

ただ実際やってみると、契約台数が増えるにつれてカバーしきれなくなってきたんですね。結局、やりとりは電話では完結せずに書面だけとなってしまい、元戻りに。「結果的にはうまくいかなかったが、やってみることが大切」と後日先輩から助言をいただきました。その時に、挑戦することの大切さと難しさを勉強させていただきました。

何事も興味を持つことが大切

- 若手時代、取り組んでよかった経験や意識したことがあれば教えてください。

取り扱う契約台数が増えて管理システムを刷新しようとなった際、細かな整備作業の情報を入力できる仕様にしました。細かい情報が分かるのはメリットですが、デメリットとしては入力の手間が増えてしまったんですね。入力の項目数が、以前の20〜30倍になってしまいました。単純に考えて、20〜30人の人手が追加で必要なわけです。

従来は整備経験のある担当者にチェックをしてもらっていたのですが、人手不足のため、入力をパートの方にお願いする形式に変えました。「整備の情報は専門知識があるプロしか入力できない」と思い込んでいたのですが、テストで何人かお願いしてみたら、意外とクリアできたんです。そこで、名古屋市のベッドタウンでもある春日井市に移転して、家事や育児の合間に入力作業をしていただけるパートの方を増員しました。みるみるうちに生産性が上がり、データを細かく入力できるようになったので、分析や振り返りがしやすくなりました。

この経験から、「何にでも興味を持ち必要なものを考えるときに活かす姿勢」が大切だということを学びました。振り返ってみると、パートの方が活躍するセンターを作るときに活きたのは、学生の時にファストフード店でアルバイトした経験でしたし、短時間で入るシフト勤務の制度は、きっと事務作業でも使える手法なのではないかと思い導入しました。

インタビューの様子1

また、多角的に考えつつ、さまざまな人に協力してもらって試すことを意識していました。そして挑戦してみた後に「できるぞ」と手応えを感じたら、一気に進めます。そのサイクルを繰り返すことが自身の成長にとって重要だったと思います。

会社全体としても、主軸の事業が自動車リース会社からメンテナンス管理会社に変化する節目がありました。多様な関係者の方に相談できる環境を作ってきて、物事を教えていただきながら進めてきたからこそ、今の場所にいるのではないかと思っています。

 - 苦しいとき、どのような心持ちで仕事に向き合ってきましたか。

「これ以上自分がこの会社に貢献できるか」「ちゃんと責任を全うできるのか」と思い悩んだことはありました。転職して全てをリセットしたくなったことも2回ほどありましたが、そのようなタイミングで大きな仕事を達成できて、自信が増したのも確かです。

実は私は、キャリアに波があります。25歳のときに転勤で課長職になって、33歳で部長職に。この時期は仕事がより難しくなり、一時期は退職を考えました。その後、主任に職位を落としたことをきっかけに懸命に努力をし、本社で部長職になりました。この経験から、こんなことを社員によく話すんです。「ダメなときはダメで、落ちることもあるかもしれない。だけど、そこでめげなければ、絶対うちの会社では復活できる」と。

- 紆余曲折があって、今のキャリアがあるのですね。

1回落ちて、色々とチャレンジさせてもらって、会社が私に成長の機会を与えてくれました。落ちた経験は、実はすごくいい経験です。何となく周囲が気遣ってくれる部分もありますし、一度自分がやらなきゃいけないこととできることを再点検して、もう一度返り咲こうというマインドセットができたのは転機でもあったと感じています。

今の若い方々に対して「すごい」と思うのは、最初から自分がやりたいことを仕事として始める方が多いことですね。私たちは、自分のやりたいことがわからない世代でした。働きがいとは、やらなければいけないこと、さまざまな意見を取り入れながら、自分の中で積み上がっていく感覚に近い気がします。個人的な意見ですが、そう思って努力してきました。

また、常に様々なことに興味を持っておくことが重要です。「なぜこの場面でこのCMが流れるんだろう」とか、「なぜこの人たちはここにいるんだろう」とか。どんなに些細なことでも理由を探して答えを出して、私だったらどうするかと思いを巡らせます。それを積み重ねていくと、何かあったときに引き出しにできることもありますよね。

経営者は「私心を持つな」

 - 例えば経営者になりたいと思う読者へ、今日から実践できるおすすめのアクションがあれば教えてください。

「私心を持つな」という言葉は、ずっと当社の創業者に言われていました。私(わたくし)の心ですね。何か提案すると「それは自分のために考えているのか」と、よく指摘されました。この言葉の意味は、ただひたすらに人のことを考えよという綺麗ごとではありません。自分のためだけの行動を考えるとき、そのアイデアには限界があるしうまくいくわけがないということをよく言われました。

この考えは、確かに経営者には必要なのかもしれません。昭和の時代には「利益は後からついてくる」という言い方をしていましたね。もちろん、ステークホルダーのためにも利益はちゃんと追求しなければならないのですが、私利私欲だと狭い考えになる。だからこそ、私心を排することで判断をより正しい方向に導くことができると思います。

ー お話いただき、ありがとうございました!

株式会社ナルネットコミュニケーションズ本社

<取材・編集:ロジ人編集部>

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