概要

今の物流を担うやりがい #03 【vol.7 狭間健志氏】

ロジ人では物流テック(LogiTech)と分類される業界の著名人、サービスをインタビューしていきます。#03では仕事のやりがいと教訓、そして物流業界を志望する若手へのメッセージをお聞きしました。

狭間さんのプロフィール画像
ハコベル株式会社代表取締役社長CEO 狭間健志氏
2009年に東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了後、ベイン・アンド・カンパニーに入社。2017年に同社を退職し、同年ラクスル株式会社に入社。執行役員ハコベル事業本部長として5年間職務に携わったのち、分社化に伴い2022年8月、現職に就任した。

カーナビのように当たり前に使われるサービスを目指して

ー #02では「 人海戦術のオペレーティングからの脱却 」を物流課題の解決策と考えているとお聞きしました。そういった仕事に関わる中で、やりがいを感じる瞬間はどのようなときでしょうか。

「このお客様にはこういう提案がはまるんだ」と感じた時や「この産業には、この方法を横展開すればいいんだ」と分かった時です。

ただ、中長期的な目標を視野に置いていますので、現時点ではやり切った感覚は持てていません。「こうなったらいいよね」という大きなゴールを見据え、それをやり切るために仕事をしています。

私たちは朝、仕事でパソコンを開いたらメールソフトやカレンダーを開きますよね。物流に関わる人たちにとって、ハコベルも同じように当たり前に使われるサービスになりたい。そのためには、物流業務を一気通貫で管理できるシステムにならなければなりません。

中期的な目標について、ハコベルのシステムをオンにしておけば運送計画が自動的に作成されて最適な配送ルートが見られる、他にも「コスト重視」「納期重視」「品質重視」というボタンを押せば、その通りに運送計画が作成される、そういった世界観を実現したいと思っています。

そのため、大きなやりがいを実感できるのはこれからです。売上を達成したときに喜ぶことはありますが、それは一瞬にすぎません。プロダクトがお客様に合わないとき、悔しい思いをすることもあります。

インタビューの様子1

ー 強い意志を持っていらっしゃると感じました。気持ちの反動もありそうですが、心が折れそうになる期間もありましたか。

「課題はあるが、今やらなくてもいい」と感じて後回しにした結果、半年後に業績に返ってきたときです。怠けると必ず結果として返ってくるのが経営です。

逆に、一生懸命に仕事をしたから結果が返ってくるかというと、そうとも限りません。ですが、怠けると必ずネガティブな結果が出ます。

人生の貴重な時間を使ってくれているたくさんのメンバーがいるので、一生懸命に無我夢中に仕事を行わなければなりません。

ー 結果が出るかはわからないけれど、懸命に仕事をしなくてはならないということですね。

そうですね。メディアでは成功した人の上澄みだけが語られることが多いですが、そこに行き着くまでには多くの泥臭いことがあって、いいことばかりではないと思いますね。

ー 仕事をする中で大切にされていることは何ですか。

いざ自分が主体となって事業経営をしてみると、コンサルタントとしてアドバイスしたり、本を読んだことをそのまま実行できるほど事業運営は甘くはないと思い知らされました。自分で実行をすることはいかに難しいかと実感しました。

そこからの学びとして「基本を忠実に行うこと」の大切さを知りました。手抜きをしたり、誤魔化したりすると経験上、事業や自分に跳ね返ってきますからね。基本的なことを正しく、確実に実行していくことが大切です。

それから、時間軸の組み合わせを大切にしています。一年先も重要ですが、明日の業績も重要です。一日、一年、十年のような複数の時間軸で捉え、コントロールすることを普段から意識するようにしています。

インタビューの様子2

メンバーが市場価値を上げられる会社に

ー 基本を忠実に行い、かつ先を見据えることが大切ということですね。狭間さんはハコベルの事業責任者のご経験を経て、CEOに就任されていますが、人の評価や採用の軸はどのようにお考えですか。

考えないといけないのは、同じ尺度で優秀かどうかではなく、自分にない能力を持っているかどうかです。

具体的に「この人が辞めたら、自分が代わりに24時間働いても、その穴を埋められない」と感じる人に集まってもらうことですね。なぜかというと、営業に強みがある人やプロダクトに強みがある人が辞めてしまったら、自分がどう逆立ちしても代わりにはなれないからです。そういう人を採用し、育てていきたいです。

ー なるほど。自分にない能力のある人が会社に集まるように意識していることはありますか

会社や事業に対してコミットして一生懸命になってくれる従業員に対して、企業が恩返しできることは、ライフタイムの収入を増やすことだと思っています。そのためには、その人が「ハコベルに関わることで市場価値を上げられること」が大事です。

ですので、ハコベルで働いて「入口と出口の市場価値が変わったと思えるような経験を、いかに提供できるか」を意識しています。

インタビューの様子3

物流業界から世の中を変えていく

ー 最後に若手が物流業界でチャレンジする意義をお話しいただけたらと思います。

これまで、メーカーは製造に力を入れてきました。製造ラインを整備し、ラインをいかに回転させるか、原料の仕入れをいかに安くするかということを考えてきました。

しかし、労働人口が減っていく中で、企業はマーケティングや商品開発にフォーカスしていきたいはずです。もし私がメーカーを経営していたら、物流をはじめに切り離して、次に製造を切り離すと思います。

つまり、マーケティングや商品開発に自社で注力するために製造や物流は外部に委託するという方向に時代が変わってきています。ですので、一社に限った物流再編ではなく、世の中全体の物流の再編が起きると思っています。

物流業界ではそういったダイナミックな変化が起きている状況なので、非常にチャレンジする甲斐があると思います。

ー 業界の再編とは具体的にどういうことでしょうか。

例えば、あるメーカーの物流が、競合である数社の物流と合併するようなこともあり得ると思います。共同配送の動きも盛んですが、それ以外にも、物流を切り離して考える企業も増えています。一つの企業がワンストップで物流を担う、そのように業界の構造が変わる未来が来ると思います。

物流業界はこれから変化していく余地があり、集約化される余地もあります。他の市場が硬直化している中で、イチから世の中を変えられる可能性がある物流業界はとてもおもしろいと思いますよ。

ー 物流業界は新しい動きが始まろうとしているのですね。様々な視点からのお話、勉強になりました。本日はありがとうございました!

インタビューの様子4

<取材・編集:ロジ人編集部>

次回はラピュタロボティクス株式会社の代表取締役CFO クリシナムルティ・アルドチェルワンさんにお話をお伺いします。
2/10(金)公開予定”です!お楽しみに!

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